自分で自分に拍手ってどうよ?

最近TV(主にクイズバラエティ系)を見ていて思うことがある。
出演しているタレントが問題に正解し、観客と他の出演者から拍手を受ける。
その時拍手を受けている本人が自分で拍手している事がある。
辞書によると


はくしゅ 1 【拍手】


(名)スル
両手を打ち合わせて、音をたてること。手を打ち合わせて、賞賛や賛成の気持ちを表すこと。
「―を送る」「―して迎える」


とある。拍手とは相手に対する賞賛行動なのだ。
拍手とは拍手される対象がいなくては成り立たない。誰もいないのに挨拶する人がいないのと同じ理屈だ。
と言う事は、拍手されている本人がする拍手にも対象がいるはずである。
それは誰か?
これが自分自身となれば、これはもう完全な自画自賛である。
拍手すると言う行動は言葉に直せば
「よくやった!」とか「あなたは凄い!」と言うような意味になるハズだ。そう思うから(形式的だったとしても)拍手するのである。
なので自分で拍手すると言う事は、自分で
「よくやったぞ!俺!」とか「俺凄いだろう!」
と言っているようなものである。
よくやった!凄い!と声をかけたところその本人が
「そうだろう。俺は凄いだろう!」何て言ったらどう思うだろうか。
「なんだこいつ、調子に乗ってないか?」とは思わないだろうか。
賞賛される側にもされる側なりの謙虚さという物があるはずだ。


だがTVなどで自分で拍手している人間は、恐らく自画自賛で拍手をしているのではないだろう。
それどころか、あれは彼らなりの謙虚さの表れなのかもしれない。
おいらは心理学とかを専門的に学んだ事は無いので、断言はできないし、所詮素人の意見ではあるが、あれは恐らくどう対応したらいいかわからないが故の行動ではないだろうか


常識的な人間ならば人から何かされた時に、何もしないのは失礼であると知っている。
例えば「こんにちは」と声を掛けられればたいていの人間は「こんにちは」と答える。
例え物凄く口下手な人でもとりあえず会釈ぐらいはする。
ここで何もしないと言う事は、相手の存在の否定に繋がるからだ。それはコミュニケーションにおいて最上級の無礼を示す。


さて、話を戻しこれを拍手された時に当てはめるとどうか?
人から拍手と言う賞賛の行動を受けた。
わざわざ褒めると言う行動なのだから、これを無下に扱えば物凄い失礼に当たる。
人から褒め称えられれば「ありがとう」等と答えるのが普通だ。
しかしTVの収録などで受ける拍手と言うのは対象が大勢であり、また頻繁に行われると言う事が問題になる。
相手がすぐ近くにいて数人であれば良いが、TVの撮影等の環境では一言「ありがとう」と言うにしても、大声で言わなければ相手全員に届かない。しかも大量の拍手音がそれをさらに困難にする。
おまけにTVのクイズ番組なんかでは、1問正解するごとに拍手されるもんだから、そんな一々大声で
「ありがとうございます!」
等と言っていられない。そんな事ができるのは、選挙の時の政治家か超体育会系の人間ぐらいだ。


ならば声ではなく体を使えばいいのだが、この時どういうリアクションをすべきかを、自分で拍手してしまう彼らは恐らく心得ていないのだ。
人間何をしたらいいかわからない時に取る行動として、周囲のマネをするというのがある。
周りと同じ様にしておけば、相手と同じ事をしておけばとりあえず失礼にはならないだろうと言うわけだ。
それに周りに合わせる事で、周囲との一体感が生まれる。これにより自分だけ特別な状況にいるという事を緩和できる。
だが、自分が賞賛されている時に同じ行動を取るのはやはり間違いだろう。
自分が賞賛されているのに、相手を賞賛してもしょうがないし、意味がない。褒めていると言う事を褒めると言うのもおかしい話だ。
それどころか、自分で拍手をすると言うのは、見方によっては
拍手して下さいと言っている様にも見える。
賞賛を自ら要求すると言う行動ほどみっともない事はない。
web拍手で考えてみるといいだろう。
自分で自分のサイトのweb拍手を押しているヤツをどう思うだろうか。
押すだけならまだしも、web拍手での一言を自分で捏造し、それにコメントを付けた物を載せ、コメントの書き込みを誘う様な行為はどうだろうか?


ではどうすればいいのか?
こんな時は軽く笑って簡単に会釈でもしておけばいい。あるいは少し手を振ってみたり、単純に喜んでるだけでもいいだろう。大切なのは賞賛を与えられたと言う事に対し適切なリアクションを取る事だ。
前者なら謙虚な感じが出るし、後者なら賞賛を受けた事に対してのリアクションと取れる*1
恐らく日本で一番こういった状況に慣れているであろう、天皇・皇后両陛下を見てみるといい。
まぁあれは拍手されている訳ではないが*2それに近い状態ではある。
元々嫌っている人でない限り悪い印象は受けないと思う。
あのように応対できれば拍手している側としても気持ちがいいものだ。

*1:皆から褒められて嬉しいと言う意思表示になる

*2:本当に拍手の時もあるだろうが