映画 硫黄島からの手紙

父親たちの星条旗に続き、滅多に映画館に見に行かない人なのに硫黄島からの手紙を見てきました。
全体的には良かったと思うんですがそれだけに、ここはもうちょっと何とかして欲しかった!という点が2つほどありました。
ああ、以下ネタバレですので注意して下さい。

西郷が微妙

この作品の主人公と言えるのは一応渡辺謙演ずる栗林中将だと思うが、兵卒の目線で見た第二の主人公はこの二宮和也演じる西郷であると思う。
種で言うところのアスランデスノで言うところのLだ。
しかしこの西郷、どこぞの批評で言われていた事だがまるで現代っ子が当時にタイムスリップしたようなのである。
彼は第二の主人公らしく他の帝国陸軍の兵卒とは違ったキャラクターを見せる。
○○であります!上官殿!と敬礼しながら言うような*1、我々がステレオタイプとして描くであろう典型的な日本兵とは違い、言葉遣いも現代風なチャラけた感じがするし、そもそも愛国心なんてなんですか状態。*2
周りの兵士達はお国のため、軍人としての尊厳を守るために自決を選択する中、西郷は家族の為に生きて帰るんだと言う強い信念を持っている・・・
そこが西郷が他の兵士達とは違った存在として描かれている理由だ。
という風に公式ページなんかでは言われているが、ちょっと待った。
見ていて思ったのだが、西郷は結局のところ周りの空気に流されているんじゃないかとおいらは感じた。
西郷は擂鉢山で残存兵が自決した後、栗林中将の命令通り北部の本隊に合流しようとするが、そこを冒頭からつるんでいた兵士*3に自決しないとは何事だみたく止められる。
そこで西郷は
『生きて戦い続けるのと、自決するの、どっちが陛下の御為になる?どっちだ!?
とCMにも出てくる栗林の『我々がこの島を守り続ける一日には意味があるんです!』
に並ぶとおいらが思う名台詞を吐く。
軍人の高潔さを守るためには自決だのなんだの言って、後退する位なら命を絶つと言う日本兵との違いを明確にすると思われるこのシーン。
しかし、しかーーーーーーしですよ。
なら何故その台詞を皆が自決する前に言わなかった
栗林中将の言った通り生きて戦うのが大事だって言いたいなら、皆が死ぬ前に言ってくれよ
もうおまえともう1人しか残ってねーじゃん!
凄い啖呵切ったけど、あの時残存部隊の士官が自決しろって言った時にそれをやってくれよ。
今更そんな格好いい事言われても、もう皆死んじゃったよ!
そうしたら感情移入できたのに。ああ惜しい。


他にもそうして生き延びて本隊と合流した所で、中村獅童演じる伊藤中尉に逃げ出した臆病者って事で切り殺されそうになった所。
生き延びる事が大事だって言いたいなら、伊藤に跪け=今から首刎ねてやる。と言われた時に抵抗して欲しかった。
言葉でも何でもいいから。それこそ擂鉢山で見せたような啖呵切るぐらいしてみせて欲しかった。
でもここでも彼は上官に命令されたら、なされるがままだった。
結局栗林に助けられるけど、何ていうか流れ任せだなーって感じたよおいらは。
格好いいこと言って見せたのも、同じ兵卒相手だけってのがね・・・
結局は流れ任せに生きていたっていうのが、現代っ子みてーだなって感じでしたよ。


ただ結局彼は一兵卒に過ぎないって言えばそれまでかもしれないけどね。
ただの一等兵*4が士官の命令に逆らってまでそんな、
『自決なんて駄目だ。最後まで戦う事が陛下の御為にもなるんじゃないのか!?』
なんて言えやしないよって考える事もできるけど、そこは準主人公で他とは違う価値観を持ってるキャラなんだから言って欲しかったってのはおいらの希望。
まぁ、第二の主人公と言えども変にヒロイックな描き方をせず、戦争においてある特定の個人が戦局をどうにかするなんて事は無いって徹してたのかもしれませんが。
そういう意味では、西郷が微妙だったのもどんな思想を持ってようが戦場で一兵卒の出来る事なんてこんなもんだ。って製作者の意図だったのかも知れません。

憲兵の回想シーンがテキトーだと思う

加瀬亮演ずる元憲兵の清水が、何故憲兵から一兵卒になってしまったのかが語られた回想シーン。
憲兵が何故こんな所にいるのか?ああいう時代にあっても清水が貫いたものとは?そういう事が語られる大事なシーンだと思いますが。
はっきり言ってここ突っ込みどころ満載だと思いました。
まず憲兵隊の上官と歩いていて、日の丸を掲げていない家を発見する訳ですが
ここで第一突っ込み!
何故この家の人日の丸掲げなかった?
戦中の日本において周りの家が皆日の丸を掲げている中、一軒だけ国旗を掲揚しないなんて事をしていたら
『あの家は非国民だ!』
と言われそうな事位ちょっと考えればわかりそうだし、現にそういう風に憲兵の上官にガン付けられてしまっている。
理由を聞かれたあの家の奥さんは
主人が出征しているから、自分では身長が足りないから?とか何かそんな感じの理由で国旗を掲げられないんです。
とか言っていたが、
だったら近所の人に手伝ってもらうとかあるだろ!
あまりに言い訳臭い台詞だから、あの台詞は適当についた嘘で、本当は日の丸を掲げたくない何か特別な理由とか、
奥さんの信念みたいなのでもあるのかなーっと思ったら、特にそんな訳でもなさそうだし。
とにかく日の丸を掲げていない家の理由が凄い不自然だと思った。


それとその後犬が吠え出して、上官が清水に射殺させようとした所。
話の流れ的に助けようとして、それがバレるんだろうなって思いましたがその過程がまたヒドイ。
清水が拳銃を空に向けて撃って、犬を撃った様に見せかけて上官の所に戻るまではいいんですよ、まだ。
その後犬が『わん!わん!』ってこれは無いと思いましたよ。
ここ第二突っ込み所です。
おいらはここで上官が
『お前、ちゃんと処分しただろうな?』
みたいな感じで確認しに行って。
『貴様、やっぱり殺してねーじゃねーか!!』バキ!(殴り)   パン!(銃声)
ってなると思ったんですよ。
犬が吼えてばれるとは思いませんでしたよ。
だって犬を助ける時に清水だって、これがバレたら自分はボコボコにされて犬も殺されるだろうってわかるでしょう。*5
助けるなら助けるで例えば、ひもを持ってこさせて犬の口を縛らせるとか*6で、何としても吼えないようにさせるとか、
『俺が銃を撃つから、そうしたら悲しんでいるフリをして思いっきり泣き喚け』
とかあの奥さんに偽装工作の指示をするべきでしょう?
銃撃った後、ありがとうございます!ありがとうございます!じゃねーって。それじゃバレるだろ、上官近くにいるんだし。
実際上官にバレて撃ち殺された時には、奥さん凄い泣き喚いてたし。
なので、自分の考えを通すために上官に逆らうなんて危険な事をする割には随分と考え無しじゃないか?って思っちゃうんですよ。
なんかこのシーンは、憲兵崩れの兵隊って役を作るためだけにとってつけた様なシーンって感じがします。
終盤映画にのめり込んでいる所だったのに、ここの話のテキトーさにちょっと感情移入が醒めちゃったって感じがしました。


えーと文句ばっかりタラタラと書きましたが、基本的には良かったと思いますよ。
5点満点で言うなら、5点って言いたい所だけどこういう惜しいところを差し引いて4点って感じです。
とりあえず俺TUEEEEEEEEEEEEEEEEな主人公が大活躍するようなのや
RPGちっくなノリで進んでいく戦争映画なんかよりは全然良いです。

*1:このみじゃないよww

*2:冒頭でいきなりこんな島アメ公にやっちまえよ発言、それが原因でボコられるけどw

*3:名前忘れたw

*4:階級章から判断

*5:実際そうなっちゃったし

*6:犬は舌を出して体温調節するから、ホントに長時間やると危険です